時を超えて

人生をかけて愛した人の事を綴ります

ブレーキが効かない

彼は新卒で入った会社を数年で辞めて、今の企業に転職し、 成功を収めていました。


彼のメールでは「単身赴任で不自由ながらも、何とか頑張ってる。もうすっかりおじさんになってしまったけど」

そんな近況を報告してくれました。


私も夫と2人、穏やかに暮らしている事を報告したように思います。


でも久しぶりの彼との言葉のやり取りに浮かれる反面、夫に言えない秘密を持ってしまった事への罪悪感が湧いてきます。

それから彼のことばかり考え始めている自分に気がつき、このままではいけないと走り出しそうな気持ちにブレーキをかける意味で、彼にメールを送りました。


「やっぱりあなたにあんなメールを送るべきではなかったですね。軽はずみだったと反省しています。これからはコッソリとあなたの事を思い出します。お元気で」


彼からは何の返信もありませんでした。

きっと彼にとっては、大した事ではなかったんだ。

これで良かった。

そう思って、彼の連絡先を全て消去しました。


それから数日後の休日。

夫と2人で買い物に行く途中の車の中で、1件のメールを受信しました。


未登録のアドレス?

誰?


メールを読んですぐに彼だとわかりました。

同時に心臓の鼓動が激しく脈打ちます。

隣にいる夫に聞こえるのではないかと思うくらいです。


「今あみは何をしていますか?

僕は今からそちらへ出張で行きます。

会えませんか?

僕は会いたいです」


そして私は、とうとう「今夜電話していいですか?

電話番号を教えて下さい」


こんなメールを返信してしまいました。


心のブレーキが緩んだ瞬間でした。