無題
私は彼と一緒に過ごした3年間で、愛し愛される事の喜びを生まれて初めて知りました。
何もなくて貧しかったけど、心は豊かで本当に幸せでした。
彼の心が手に取るように分かって、彼に守られていつも安心でした。
彼の夢は、私の夢。
ずっと一緒。
そう思っていました。
でも、私が就職をして先に社会に出た事で、少しずつ2人の間にズレが生じてきました。
そして私は彼以外の人を好きになったのです。
私が別れを切り出した時、初めて彼の涙を見ました。
「嫌だ」
彼は何回もそう言いました。
私も泣きました。
二人でたくさん泣きました。
この日、それまで生きてきて、一番悲しい別れを経験したように思います。
別れた後も、彼は私に「戻って来い」と言い続けてくれました。
でも私は、そう言ってくれる彼が疎ましかった。
それなのに数年が経ち、彼に彼女が出来た事を知ると、私の心がざわつきました。
人のものになった途端、焦りだしたのです。
勝手だとはわかっていても、彼が人のものになる事が耐えられなかった。
そして思い切って、彼に電話をかけました。
「すぐにおいで」
そう言ってくれる事を期待して。
でもその時の彼の口調で、部屋に誰かいる事はすぐに察しがつきました。
「ひとりじゃないよね?」
「うん」
タイミングは最悪で、結局何も言えませんでした。
そして彼はその数ヶ月後に彼女との結婚を決めたのです。
「彼女が妊娠した。結婚しなくちゃいけなくなった。俺の人生はこれで終わった」
何でこんな結婚報告なんかしてきたんだろう。
何で幸せいっぱいの結婚報告じゃなかったんだろう。
彼の気持ちが何処にあるのか知りたかった。
それを確かめるために最後、私は彼に抱かれに行きました。
でも何も感じなかった。
彼と体を重ねて、何も感じなかったのは初めてでした。
そして彼は間もなく結婚し、もう2度と会ってはいけない人になりました。
彼は、身勝手で我儘な私を一度も責めた事はありませんでした。
責めるどころか、ずっと好きだと言ってくれました。
再会してからも「あの頃の僕には力がなかった。何もなかった」
そう言って、私のせいではないと言ってくれたのです。
私は彼の優しさに触れる度に、後悔の波に飲み込まれていきました。
ここまで書いて、今かなり辛くなりました。
読み返すと、涙が出ます。
あまりにもとりとめもない文章に、タイトルも思いつかないほどです。
少し間を置きたいと思います。
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。