時を超えて

人生をかけて愛した人の事を綴ります

始まりは突然に

翌日も別の友達から買い物に誘われて、学校帰りに繁華街へ行く事になりました。


もしかしてまた会えないかな。

またあの場所でチケット売ってないかな。


そんな事を期待しながら昨日彼と出会った場所を通ったりしてみたのですが、彼はいませんでした。


ほんの少し残念な気持ちを残して、そろそろ帰る事に。


そしてバス停に続く地下道を抜けて、地上に出た瞬間


「あっ!」


沢山の人が行き交う雑踏の中で、彼を見つけたのです!


今でもあの光景をハッキリと覚えているのですが、彼の姿だけが止まって見えました。


彼もすぐに私に気が付いて、歩く足を止めてくれました。


「昨日はどうも」

「今日は1人なんですね」

多分照れながら、そんな会話をしたように思います。


そしてそのまま3人でお茶をして、せっかくだからと電話番号の交換をしました。


するとその日の夜に、早速彼から電話が来たのです。


彼は他県から来た学生だったので、下宿住まい。

当時はもちろん携帯なんてないわけで、電話をするには隣に住む大家さんの電話を借りるか、近くの公衆電話まで歩かなくてはいけません。


さすがに女の子に電話をするのに大家さんの電話を借りるわけにもいかず、きっと意を決したかのように10円玉を握りしめて、ドキドキしながら公衆電話まで歩いた事でしょう。


私もまさか、こんなに早く電話が来るなんて思わなかったのでとても驚きました。


彼は今もそうですが、昔から勝負が早い人でした。

遠回しな事なんて言いません。


「付き合おうよ」

直球です。


だけど言われたこちらは戸惑います。

それにこの時、私には片思いでしたが同じクラスに好きな人がいました。

なので、すぐに返事なんてできません。

「昨日知り合ったばかりだし、まだよくあなたの事が分からないから」と言うと、彼は「今から知ればいい」と。


私は、彼に完全に惹かれていました。

片思いの人なんて、もうどうでも良かった。

迷ったふりをしながら、とても嬉しかったのです。


そして話の途中で彼が「そこから月が見える? 今日の月は綺麗だ〜」と。


その晩は月がとても綺麗だったのを覚えています。


月を見ながらの彼とのお喋りは、本当に楽しかった。



もしこの日に彼と会わなかったら、私達が付き合う事は多分なかったと思います。


彼もこの時の事はハッキリ覚えていると。

また会えると思っていたと言ってくれました。



そして私達はここから数え切れないほどの、出会いとサヨナラを繰り返していく事になるのです。


終わったと思っても、また始まる。


それに、まさか何十年も経って彼を見つける事になるなんて思いもしませんでした。


だからまたいつか。


何年先か。

何十年先か。


いつになるかわからないけれど、また繋がるかもしれない。


だって、私達は出会うべくして出会ったのだから。