時を超えて

人生をかけて愛した人の事を綴ります

プロローグ

私達の初めての出会いが、私達の全てを物語っているように思えてなりません。

今でも彼との出会いを思い出す度に、不思議な縁を感じるのです。


以前の記事にも書きましたが、もう一度ここから書かせて下さい。




彼と初めて知り合ったのは、今から33年前の7月。

ちょうど今頃。

18歳でした。


私は専門学校の1年生。

ある日授業が終わって仲良し3人組と繁華街を歩いていると、突然知らない男子2人組に声をかけられました。


「◯◯大学の演劇同好会なんですが、今度僕達の公演があるので、チケット買ってもらえませんか?」


演劇?


聞けば彼らは私達と同い年の大学1年生。

「初舞台で今度僕が主演なんです!」

白いTシャツにジーンズ。

役作りの為に髭を蓄えた、ちょっと個性的な人はそう言いました。


それが彼です。


彼は演劇に全く興味がない私達の反応の悪さにもお構いなしで、軽快な喋りで押して来ました。

確かチケットの値段は、当時の金額で500円。「高いな〜」と私達が渋り続けると、何と「10円でいいから来て欲しい」と。


この大安売りに、やっと乗った私達。


「本当に10円でいいの?」と言いながら彼に手渡すはずの10円玉が私の手から滑り落ちて行方不明に。


え?どこどこ?

ないよ!何で?


男女5人が一斉に下を向いて10円玉を探していると、突然彼が私の足下を指差して「あった!」と叫びました。


彼の指した方向を見ると、私が履いていたスニーカーの靴紐に、10円玉がピタリと挟まっていたのです。


これには皆んなで大笑い。


一気にその場が和やかな雰囲気になり、必ず公演に行く事を約束して私達は別れました。


彼らと別れた直後の品評会さながらの女子トークの中で、1人の友人が「髭生やしてた人って、あみの事気に入ってたと思わない?」


その言葉に「えー?そんな事ないよ」と、これまたありがちな返しをしながら、とても嬉しい気持ちになったのを覚えています。


その時、既に私の心の中に彼がいる事を確認したような気がします。


昨日まで知らなかった彼が、何故わずかな短い時間の中で、私の心に入って来たのかはわからないけれど、又会いたいと思いました。


彼は彼で「10円玉の娘がいいな」と言っていたそうです。


そしてこの出会いは、私達の次なる出会いへと繋がるプロローグだったのです。