時を超えて

人生をかけて愛した人の事を綴ります

僕ではない

彼とはほぼ1年近く、心と言葉を通わせる事はありませんでした。

彼の誕生日もスルー。

一人でそっとお祝いしました。


悲しいかな、忘れようとすればするほど彼への想いは増していきます。


そしてそんなある日、ちょっとした事で夫とぶつかってしまった私は、とうとう衝動的に彼にメールを送ってしまいました。


「あなたは今幸せですか?

残念ながら私は幸せではありません」



すると翌日の明け方、彼から長文の返信が届いたのです。


「頑張れ!

自分の決めた人生だから。

頑張って、頑張って、頑張って、それでもダメだったら僕はあみの全てを受け入れるよ。

でも最後にあみを受け入れるのは、多分僕ではない。

あみの一番近くにいる人」


何度も読み返しました。

彼が何を言っているのか理解できなかったから。

これってどういう意味?

もしかして彼が私を突き放してる?

そんなはずない。


何度も何度も読み返して、読み返して.......。





「僕ではない」


見事に突き放された彼のこの言葉が、私の心に深く悲しく突き刺さります。

そしてたくさん泣きました。


そうだよね。

そんな事は分かってるよ。


だったら何で私を口説いたりしたの?


泣いて終わるなんて嫌。

終わるのは全部吐き出してから。

それで完全に嫌われてもいい。

後悔はしたくないから。


そう思った私は、覚悟のメールを彼に送る事を決めたのです。

さよならメール

そんな違和感を抱えたまま、ある日彼の住む街にお泊まりデートに行きました。

いつもなら彼の部屋に泊まるのですが、その日は部屋が散らかってるからという理由で駅前のホテルに泊まる事に。


散らかっててもいいのに。

何でわざわざホテルなんて予約するの?

部屋に入ると何かまずい事でもあるの?

この時点で私の違和感は更に増していきます。


彼は私がそんな気持ちを抱えている事など知る由もなく、私を喜ばそうと一生懸命デートのプランを考えてくれていました。


二人で映画を観て、お酒を飲みながらご飯を食べて。


でも楽しいはずのデートが、私の勝手な思い込みで存分に楽しめないのです。


そして翌日の別れ際。

次の約束もないままにあっさりと「じゃあね」と帰っていく彼の後ろ姿を見送りながら、とても切なく悲しくなりました。


きっと彼も楽しくなかったんだ。

もしかして嫌われたかな。


そしてその後彼に何度かメールをするも、ひとつも返信が返ってくる事はなく。


ひどいよ。

もう限界。

そんなに別れたいなら、こっちからさよならだよ!


傷つく事が怖かった私はとうとう、彼にさよならのメールを送りつけてしまいました。


「あなたにとっての特別は私じゃない!

奥さんだよ!」


それは、決して踏んではいけない地雷を100個くらい踏んだような最悪なメールでした。


そして返信がない事が答えなんだと思いました。


もう完全に終わり。


私達は、ここから2年以上も離れる事になるのです。

禁断の質問

私と彼は昔付き合っていた過去があるだけに、再会してからの彼の状況に違和感を感じる事が多々ありました。

例えば彼に家族がある事もそのひとつ。

20年以上の時を飛び越えて繋がってしまったので、少年だった彼に家族がいる事が違和感でした。

あの頃は私だけを見ていてくれたのに、「不倫」という括りで繋がってしまった事が切なく苦しかった。

それは彼も同じだったようで、私の苗字が変わってしまった事に違和感を感じていたようでした。


「あみは、本当に結婚したんだな........」

彼のこの一言で、私は益々切なくなりました。

更に彼の奥さんってどんな人だろう。

どうしても、そんな事を考えるようになりました。

そしてとうとう「奥さんってどんな人?」と禁断の質問を彼に投げかけたのです。

すると彼は躊躇する事なく「歳とったら散歩したいなと思うような人だな。嫌いじゃないよ」


これには心がギュッと固まりました。

でも私は何食わぬ顔で「素敵な事だね」と返したと思います。

きっと彼の奥さんはとても優しくて素晴らしい人。

それは分かっていました。

家に不在がちな彼に変わって、彼の大切な子供達をほぼ一人で立派に育てあげた人だから。


でもね.....ちょっとでいいから気を遣って欲しかった。

聞いた私が悪いのだけど、ほんのちょっとだけ嘘をついて欲しかった。





あの時私が手を離していなかったら。

あの時私がモタモタしていなかったら。

そしたら今でも私は、彼の隣で大口開けて笑っていられたのかな。

最大の後悔の波に飲み込まれた私は一人暗い海底に沈んでいきました。


そして「そんな素敵な奥さんがいるのに、何で私といるの?やっぱり遊び?」

そう思うようになり、彼の何気ない一言や行動に、ますます違和感を感じるようになっていきました。